車を買い替えた。
古い車から、少し古い車に乗り替えた。
前の車は20年くらい前の車種のモデル末期を中古で買って、十数年乗った。
好きな車で欲しくて、程度の良いものを探してまわって、ディーラーの中古売り場で見つけた車だ。
オーディオ周りも目新しい装備は何も無く、純正のカーステレオが付いている他には、特にオプションなども無かった。
乗り物として最低限の装備と機能しかないシンプルな作りだからこそ、長きに渡り使用に耐えたんだろう。
とはいえ、ほぼ毎日乗り続け十数年、十数万キロとなると色々ガタが出てくる。
もちろん修理すれば直るのだが費用もかかる。
あちこちガタが来てるもんだから、修理をしても今度は別のところに不具合が出るかもしれない。
そうなるとキリがないので、家計に余裕もないし、愛着ある車だったが買い替えることにした。
今度の車も、現行モデルよりもモデルチェンジ前の型のデザインの方が好きなので、10年ほど前の型落ちモデルの程度の良いものを探してまわって見つけてきた。
10年前の型落ちとはいえ、手放した愛車と比べれば10年ほど新しく作られた車はグレードなどの差もあるにせよ、エアコン一つ取っても便利になっているなあ、と感じた部分が多々ある。
そういった車本来の「走る」という機能に直接関わる、足回りやエンジンの性能向上といった部分とは別の部分、「便利さ」や「快適さ」を向上させる技術に感心し、自動車の本来の目的がただ「走る」ことではなく、「人を乗せて走る」ということだと改めて気づいて、ならばこの先どうなるか、と、今から10年後の車の姿を想像してみた。
人を乗せて走る以上、「便利さ」「快適さ」だけではなく「安全性」も必須条件となる。
ドライブレコーダーという装置がある。通称、ドラレコ、というものだ。
フロントガラスの辺りに取り付けて、ドライバー視点で映像を録画する、というもの。
事故や事件などの映像が残るので、あとあと証拠として提出できる。
現在のドラレコは内蔵メモリなどに記録するのだが、これだけWi-FiやLTE回線が飛び交っているなか、そういった通信回線に常時接続して、動画や静止画などのデータはクラウドに保存してどこからでもダウンロード出来る、とか、GPS情報や危機回避行動などの情報がリアルタイムで保険会社、警察などに送られる、なんてことがそう遠くない未来、それこそ10年後には普通になっていてもおかしくないのではないだろうか。
それをサーバーに保管して、続々集められてくる情報をAIが分析して、計算、処理していく…
警察の鑑識が事故後に現場でする処理も、大部分がAIでスピーディーかつ正確に処理され、人間は現場でAIが追いきれない部分を経験値の高い担当者が職人的な目で補う、みたいになるのではないか。
全ての車が通信回線に常時接続されるようになると、渋滞情報もより詳細かつリアルタイムで共有できるようになる。
さらに、自動車メーカーのみならず現在さまざまな企業が取り組んでいる自動運転技術が実用化されると、この通信回線常時接続はとても相性が良いのではないだろうか。
交通状況をリアルタイムで把握し、なおかつ社内LANや家庭内LANのように、たとえば周囲80メートル内の他車と常に相互通信し、衝突事故の回避などの確率を上げる、とか。
すでに実用化されている、半自動運転に、レーンキープアシストやプリクラッシュブレーキ、レーダークルーズなどがある。
レーンキープアシストは走行車線を守ってカーブを「車が」ハンドルを切って曲がっていくシステム。運転者は念のため手を添えていなければならない。
プリクラッシュブレーキは先行車に追突や、歩行者、障害物などに衝突しないように車が判断して運転者より先に自動でブレーキをかけるシステム。
人間の目のように、カメラで状況を認識して判断するタイプもある。
レーダークルーズは先行車にレーダーを照射して、そのレーダーが跳ね返ってくるまでの時間で車間距離を測り、付かず離れずの一定距離を置いて追従したりブレーキをかけたりするシステム。
こういった機能は安全性を高めながら運転者や乗員に快適さ、便利さも同時に提供してくれる。
今の自動追従システムはスムーズで、不自然さが大分減った。極端に車間距離を詰めたり、大分離されてからスピードを上げるような、そういった動きが減って、より人間が運転している感覚に近い自然な緩急のつけ方なので、心理的なストレスが減った。
何より、運転そのものの大部分をコンピュータに代わってもらうわけだから、身体的な疲労も大幅に減る。
安全で、便利で、快適だ。
運転と直接関係無いが、乗車する際、両手がふさがっている場合、足元センサーでスライドドアをオープンする機能まである。
それこそ近い未来、車に乗り込んだら音声やタッチパネルで行き先を告げ、あとは目的地に到着するまで読書や映画鑑賞や、睡眠だってとれるようになることだろう。もはや人間が運転するよりも安全で渋滞も減り、車を運転したい人たちはサーキットへ出向いてカートや自動運転機能をオフにした車を運転するようになって、ああ、金のかかる遊びだね、なんて言うようになるのではないだろうか。
そんな10年後、私はどんな車に乗っているのかなあ。